看取りへの対応

看取るということ

日進月歩の医療に対して、常に新しい知識を得る努力を行い、そしてその知識を、私たちが診る患者さんに生かすこと。
疾患に対して、老衰に対しても、あきらめないこと、それが医療の本来の役割です。
しかしいつかは、だれしも最期の時を迎えます。
出来ることをやったうえで、初めて命の終わりを受け入れるという段階になるのだと思います。
ここは私たち医療従事者も、ご本人も家族も同じです。

”命の終わり” を受け入れる

疾患の進行などにより、患者さんやご家族と繰り返し話し合い
治療の効果が見込めない、または治療をやめる、という結論に至ったとき
命の終わり(終末期)として看取りにはいる段階となります。

命との出会いから生まれた取り組み

命の終わり(終末期)に起きる身体的変化になるべく動じることなく、ご自宅で穏やかにその時を迎えるために
患者さんとご家族にとって必要なサポートがあります。
これまでに多くの患者さんと出会い、「命の終わり」に寄り添うという尊い学びがありました。

いつか迎える命の終わり(終末期)への準備として、3つの段階(Phase=段階)があると考え、その段階毎に、私たちが取り組んでいることがあります。

穏やかな“看取り”のために
“命の終わり”における3つのフェーズ

Phase 1 “命の終わり”への準備

終末期では7割の方が意思表示できなくなるとされ、ご本人が命を全うするためにも“命の終わり”(終末期)について信頼できる家族や医療、介護関係者と事前に話し合うことが大切です。この過程をアドバンスケアプランニング(ACP)と呼んでいます。
訪問診療では患者さんは何らかの疾患や老衰の進行を患っており、 初診時のACPが重要です。 またその後も疾患の進行など、必要に応じて繰り返します。
家族そしてご本人がその時に慌てないためにも、ACPの実施は非常に大切であると感じています。

 

Phase 2 “命の終わり”を迎えた時

自宅で看取る場合において、“命の終わり”を迎える時に必要なことは何か。数多くの患者さんを自宅で看取らせていただき、行うようになった取り組みがあります。
そのキーワードとなるのが、以下の4つです。
Accepting(受容)
Role(役割)
Information(情報)
Service(医療・看護・介護サービス) 
それぞれの頭文字から、当院では終末期を迎える際の取り組みを “ARIS care (アリスケア)” と名付けました。

終末期を支える取り組み
ARIS care

アリス ケア

Accepting
受容
終末期を家族が受け入れる必要性を伝える

医療も介護も、そして家族も、ご本人に少しでも良くなってもらうため様々な介入をします。
しかし終末期を迎え死が目前に迫る状況下においては、良くなることを望むより、患者さん自身の旅立つ過程を見守ることが必要になります。
落ち着いた気持ちで見守ってあげるためには、命の終わりが近いことを受け入れてあげる家族の気持ちの変化が必要です。
良くなることを希望し続けることは、家族にとってつらいもの。
命に終わりがある限り、どこかで旅立つことを受け入れてあげてほしいと思います。

Role
役割
終末期を迎えた時の家族の役割を伝える

それまで少しでも元気に過ごしてもらうため、家族がご本人にしてあげていたいろいろなことは、終末期を迎えると難しくなります(食事やトイレの介助、声掛けやリハビリなど)。
旅立つときにおいて家族の役割がどう変化しどうあるべきかを伝えることが 受け入れることにもつながります。

Information
情報
過程や身体的変化を具体的に伝える

自宅で看取り場合、家族にとってそれは初めての経験である場合がほとんどです。
どんな過程を経て、旅立ちのときを迎えるのか。
このことを具体的に説明することで、終末期に起きる身体的変化になるべく動じず、落ち着いた時間を過ごせます。

Service
医療・看護・介護のサービス
サポート体制の確認

自宅で看取る場合、医療や看護、介護のサービスがサポートできる体制にあるのかどうか。
その確認を行うようしております。

Phase 3 “命の終わり”を迎えたその後

grief care(グリーフケア)という言葉があります。
人は死別などによって愛する人を失うと、大きな悲しみである「悲嘆(grief)」を感じ長期にわたって特別な精神状態の変化を経てゆきます。
遺された家族が故人のいない世界に適応していくこの悲嘆のプロセスを「grief work」と呼び、それを第三者が手助けすることをgrief careと呼びます。
必要でない方もいれば、手助けが必要な方もいらっしゃいます。

“終わり”のその先に、思いを寄せる
「はなまる家族会」

亡くなった患者さんのご家族がその想いを口にし、
それを誰かが聴いて受け止める。
これも大切なグリーケアのひとつです。
当院では亡くなった患者さんのご家族を対象とした
「はなまる家族会」を開催しております。

この家族会は、“大切な人を失った” という共通の思いのもと集まり、当時の気持ちや現在の様子を参加者同士話したり話したり聴いたりする場。
少しでも悲しみが和らぎ、前に進む気持ちになる
そのきっかけになればと思います。